もし、相棒がいなかったら

 もし、「相棒」がいなかったら、あれほどの成功をおさめることができただろうか。ジャズの歴史を振り返ると、そう思える例が多くておどろいてしまう。よき相棒を得たことで、ジャズ史に残る業績を残したグループを年代順に列記してみよう。

デイブ・ブルーベック(相棒はポール・デスモンド
 デイブ・ブルーベック・カルテット 1951-1967
ミルト・ジャクソン(相棒はジョン・ルイス
 モダン・ジャズ・カルテット 1952-1997
マイルス・デイヴィス(相棒はジョン・コルトレーン
 マイルス・デイヴィスクインテット 1955-1960
アート・ブレイキー(相棒はウエイン・ショーター)
 アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズ 1959-1964
ビル・エヴァンス(相棒はスコット・ラファロ
 ビル・エヴァンス・トリオ 1959-1961
ジョン・コルトレーン(相棒はエルヴィン・ジョーンズマッコイ・タイナー
 ジョン・コルトレーン・カルテット/グループ 1960-1965
マイルス・デイヴィス(相棒はウエイン・ショーター)
 マイルス・デイヴィスクインテット/グループ 1964-1970
ジョー・ザヴィヌル(相棒はウエイン・ショーター)
 ウェザー・リポート 1971-1986
パット・メセニー(相棒はライル・メイズ
 パット・メセニー・グループ 1977-2005
 
 こうしてみると、一世を風靡したグループの全盛期が、相棒の存在によって支えられていることがよくわかるだろう。もし、彼らのような相棒と巡り会えていなかったら、黄金期をつくれなかったのではないか。そう思えてしまうほど、相棒の果たした貢献度が高いグループも少なくない。
 
 ジャズは即興演奏の音楽であり、それゆえに、共演者がすぐれていればすぐれているほど、共演者に与える影響は大きい。もちろん、相性もあるし、リーダーの特性、相棒の特性という人それぞれが持つ特性も関係してくる。それらすべてがマッチした時に、途轍もない化学反応が起きるのだ。相棒に近い言葉に二番手や助手があるが、彼らは決して二番手ではなく、リーダーと同格、あるいはリーダー以上の場合もあるのが、ここで言う相棒である。
 
 その中でも、おどろくのはウエイン・ショーターである。アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズ、60年代マイルス・デイヴィスクインテットウェザー・リポートという1960年代から80年代にかけて、ジャズ界のトップに君臨した3つのグループにウェインがいるのである。ウエインは天性の相棒気質なのだろうが、彼が果たした業績を振り返れば、史上最強の「相棒」と言って間違いない。

 

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テナー・サックス奏者、ウェイン・ショーター 

from Wikipedia photo Brian McMillen