オリジナリティのつくり方

 オリジナリティがあるかどうか。芸術をするすべての人にとって最も悩ましい問題がそれだろう。
 モノマネではなく、誰とも似ていない自分の音楽をする。古来、すべての音楽家はそれを目指して切磋琢磨し、オリジナリティのある作品を作り上げてきた。しかし、これは非常に困難なワザである。早くから身に付ける天才もいれば、ベテランになってからやっと到達する人もいる。多くの人は、明確ではないが何となく他の誰でもないような個性で行くだろう。それでいいのだ。モノマネでなければいい。
 音楽でも文章でも絵画でも、誰かさんと似ている、他で見た気がする、そう思われたらおしまい。その瞬間つまらなく思われてしまう。そういう似ていない演奏をするためにも、オリジナリティや個性を意識して身に付けようとする行為を常に心掛けねばならないのである。
 ミュージシャンにインタビューする時、オリジナリティについて質問をすることがある。その中で、パット・メセニーの発言が非常にわかりやすくてインパクトがあったので紹介したい。
 
── あなたはオリジナリティや個性をどのようにして身に付けたのですか?
パット ギターの練習をする時、もし誰かがやった演奏や似た演奏をしてしまったら、それを徹底的に排除した。それを何度も何度も繰りかえした。

 実に明解である。パットは18歳の時ゲイリー・バートンからバークリー音楽大学に誘われる。生徒ではなく先生としてだった。21歳で初リーダー作を発表。その時すでに他の誰でもないパットにしかできない音楽と世界観を作り上げていた。パットはウエスモンゴメリーに心酔したが、その影響さえも徹底的に排除したのだ。まあ彼のような人は天才であり、史上数えるほどしかいない巨人であるわけだけど、似たものを徹底的に排除するという方法は、すべての芸術家がやらねばならないことだ。似ているかどうかを判断するためには、オリジナリティを確立したミュージシャンの演奏を記憶しておかねばならないけれどね。

 

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パット・メセニー wikipediaより