ハードバップって何?

 「ハードバップ」というジャズ用語はジャズの解説でよく使われる。チャーリー・パーカーが第二次大戦直後にモダン・ジャズ革命を起こし、そのジャズは「ビバップ」や「バップ」と呼ばれた。しばらく多様的な変化をみせたビバップは、50年代に入り、ひとつのスタイルに集約されていく。それがハードバップである。Hardというと固くて激しいものを連想するが、音楽の印象はハードというわけではないからややこしい。別の名称にしてほしかったな。Hardは俗語としては「素晴らしい、格好いい、最高にいかす」などの意味があるので俗語として使ったのだろう。代表アーティストは、ブラウン~ローチ・クインテットアート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズホレス・シルヴァークインテットキャノンボール・アダレイクインテットなどだ。すべてトランペット、サックス、ピアノ・トリオからなるクインテット編成である。
 ジャズ・スタイルを次々に変革させたマイルス・デイヴィスはこの後もモード手法を導入したり、ロックやファンクと融合させたり、時代の変化をリードした。だが、ジャズ・スタイルの定形として世界中に普及し、揺るぎないポジションと人気を築いたのはハードバップである。ジャズにはさまざまなスタイルが存在するが、ジャズといえば、概ね第一にハードバップを指すと考えても、概ね間違いではないでしょう。
 リチャード・コックスは『Jazz Encyclopedia』のハードバップの項目で、「Hard bop was the settling-down of bebop」と記した。settle downは「落ち着く、定住する」などの意味。ビバップのスタイルが、落ち着き、安定したというわけだ。

 

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Richard Cooks『Jazz Encyclopedia』より