ヒットチャートはアテにならない

 これ聴いていないなあ、知らないなあ。昔のヒットチャートを眺めていると、首を傾げることがある。ジャズではさすがにそれはないと思うが、ポピュラー・チャートでは、たとえ一位になった曲やアルバムやアーティストでも、知らないことが少なくない。
 そこで、こんな疑問が起こる。
 一位になった音楽なら、興味がなくとも、どこかで耳にする機会はないのだろうか。
 答えは、知らなくても別にふしぎなことではないのである。一位になっても、一度人気が落ちれば、あまり話題にならなくなってしまうことが多いからだ。ヒットというものはふしぎなもので、その時代、そのタイミングでなければ話題にならないような性質を持っている。流行歌とはよくいったものだ。
 だから、ラジオでいつまでも流され続けるわけでもないし、レコード(CD)で何度も再発されるわけでもないし、サブスクで再生回数が増えるわけでもないのだ。
 ジャズではそれとまったく逆の現象が起こる。ジャズの場合、元々は、数人のスタッフしかいないようなマイナー・レーベルが制作したレコードであっても、それが名作であれば、毎年売れ続ける。セールスの規模は大きくなくても、毎年売れ続ける。そうなると、累積枚数がすごいものになっていくのだ。もちろん、メジャー・レーベルがつくった名作も数多くあり、制作会社がマイナー、メジャーにかかわらず、半世紀以上が過ぎても名作は変わることなく売れ続けている。
 これはジャズという音楽が持つ性質のひとつだ。

 

ナット・キング・コールの『Love is the thing』は、Billboard Magazine 1957年5月27日号で第一位になった。このアルバムは今も売れ続けている。これは例外のひとつか。